管楽器の中で最も音域が広いクラリネット。その音域は4オクターブ弱もあり、他の楽器で例えるとフルートからトロンボーンまでをカバーしていることになります。また、音域によって音色が違うのが面白い楽器なのです。詳しく解説していきましょう。
この記事ではEsクラからバスクラまで、それぞれの音域について全て紹介します!
クラリネットの種類についておさらい!
まずはクラリネットの種類を確認してみるぞ!
「クラリネットファミリー」の紹介をします。小さい方から、ソプラニーノ(いわゆるエスクラ)、ソプラノ(吹奏楽で一般的に使われるB♭クラ)、アルト、バス、コントラアルト、コントラバスがあり、これら全ての楽器を用いると6オクターブ以上の音域での演奏が可能になります。
クラリネットアンサンブルでは、これらの多様なクラリネットが並んで演奏します。その姿や、重厚な音色は迫力満点ですよ!
クラリネットファミリーで奏でるアンサンブルは重厚で迫力満点!
それぞれのクラリネットの音域を画像とともに解説!
一般的なB♭クラリネットの音域
まず、どの種類のクラリネットも指使いは同じです。以下のように、かなり広い音域の音を出すことができます。
しかし、B♭クラだと実際に出ている音は以下の音になります。
B♭クラで「ド」を吹くと、ピアノの「シ♭」の音が出ています。このように、吹いた時の音がピアノの音とは違う楽器のことを『移調楽器』といいます。そして、実際に出ている音のことを『実音』といいます。クラリネットでいうドは、実音だとシ♭。シ♭は、ドイツ語だと「B♭(ベー)」となります。これがB♭管(べーかん)の楽器ということです。
クラリネットは「移調楽器」なので楽譜に実際に書かれている音と実音が違います。
Esクラリネットの音域
吹奏楽では、1stクラの横に座り、高い音を担当しているエスクラ。標準的な音域は、実音で以下の通りです。
エスクラでドを吹くと、ピアノでいうミ♭(ドイツ語だとE♭:エス)が鳴ります。名前の通りE♭管(エスかん)の楽器です。B♭クラより3音高い音が鳴ります。
この図だと、少し音域が狭いような印象を受けますね。高い音になればなるほど、音程を非常に取りづらい楽器で、運指表に存在する音でも鳴らすことが難しくなります。
Esクラリネットは音程が不安定な楽器であり、正しい音程で吹くのにも一苦労。
バスクラリネットの音域
バスクラリネットは、B♭クラの1オクターブ低い音が出る楽器です。(実音表記)
ヘ音記号になりました。低い音が出るのがよくわかりますね。実音だとこの音が出ているのですが、不思議なことに、バスクラの楽譜はB♭クラと同じようにト音記号で書かれています。
バスクラリネットは低音楽器だけども、日本ではト音記号で表記されることが多いぞ!
バスクラは、B♭クラと同じように最低音が「ミ」です。しかし、バスクラの中には「ド」まで鳴らすことができるものもあります。一般的なバスクラよりも少し菅が長く、キイの数が多くなっています。
アルトクラリネットの音域
アルトクラリネットは、エスクラより1オクターブ低い音が出る楽器で、E♭管(エスかん)の楽器です。エスクラのように、音程をとるのが難しく、全部押さえたシ〜ミの音程が上がりやすいという特徴があります。ベル部分を抜いて調整することで少し改善するので試してみてください。
アルトクラリネットはEbクラ同様、音程を取るのが少し難しい楽器
音域がホルンやユーフォニウムに近いので、曲の中でこれらの楽器と同じ動きをすることが多いです。
吹奏楽では中低音の音響の補助として活躍するぞ!
コントラバスクラリネット、コントラアルトクラリネットの音域
コントラバスクラリネットは、バスクラの1オクターブ下の音が出る楽器、コントラアルトクラリネットは、アルトクラの1オクターブ下の音が出る楽器です。
これらクラリネットの低音楽器の中には、一般的なクラリネットとは違い、管の全てが金属で作られているものもあります。有名なものは、ルブラン社のコントラバスクラリネットです。クラリネットとは思えないような見た目にびっくりすることでしょう。
クラリネットの音域にはシャリュモー、ブリッジ、クラリーノ音域が存在します
シャリュモー音域(低音域)
太くあたたかい音色が特徴ですが、怪しさや強さも表現できる音域です。この野生的な音色は、クラリネットの元となった楽器(シャリュモー)からきているといわれています。
ブリッジ音域(中音域)
「喉の音」とも呼ばれており、クラリネットが最も苦手とする音域です。吹いていて詰まった感じがして苦しく、音程も取りづらいです。大きい音も出すのが難しい、奏者泣かせの音域です。右手で、近くの空いたキイを押さえると、少し柔らかい音色にすることができます。
運指も複雑で出来れば避けたい音域じゃな…
クラリオン音域(中高音域)
クラリネットが最も得意とする音域で、明るく華やかで美しい音色を特徴としています。運指も難しくないので、速いパッセージもこなせます。
クラリネットの中でも一番おいしい音域じゃ!
クラリネットの広い音域が聴ける曲を吹奏楽、オーケストラから紹介!
クラリネットが活躍する吹奏楽曲
ルイ・プリマ「シング・シング・シング」
クラリネットソロで出てくる最高音がとても高く、クラリネットの音域の広さに感心します。とても珍しい、バスクラが最初から最後までメロディーを担当する曲となっています。
吹奏楽界では有名な一曲じゃな
ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」
冒頭のクラリネットソロ、低い音から高い音に駆け上がるグリッサンド(ド・レ・ミのように区切らずにトロンボーンのように滑らかに上る)が印象的な曲。作曲者のガーシュインは最初、17連符で書いていたのですが、奏者がリハーサル中にふざけてグリッサンドで演奏したところ、ガーシュインが気に入り採用されたそうです。
このソロがカッコよすぎてクラリネットを始める人もいるぐらいじゃ!
クラリネットが活躍するオーケストラ曲
モーツァルト 「クラリネット協奏曲 イ長調 K.622」
クラシック史上最高傑作の一つでもある曲です。クラリネットの音域の広さを駆使し、とても美しい曲に仕上げられています。
クラリネットの音域について まとめ
いかがでしたでしょうか。クラリネットファミリーにはまだ紹介しきれていない種類もあるので、興味を持たれたらぜひ調べてみてください。華やかな高い音から柔らかな低音まで、多彩な音色を聴かせてくれるクラリネットの魅力が伝われば幸いです。