クラリネットを吹いている方の中には、「チューニングが全然合わない…。」「そもそもなぜチューニングが必要なの?」などの疑問を持っている方がいるかもしれません。
今回は、クラリネットのチューニングのやり方について、細かく解説していきますね。
そもそもチューニングとは?
ピアノは鍵盤を押せばいつも同じ音が出ますね。実は管楽器はそうではありません。同じ楽器でも吹く人によって、くわえ方や息の入れ方が違うため、出る音の音程も微妙に変わってきます。ですから、合奏前にメンバー全員で音程を揃える必要があります。これがチューニングです。
チューニングが合ってないと起こること、必要性について
Aさんの音を基準にBさんがチューニングをするとします。Aさんの音をよく聴いて、同じ音をBさんも伸ばします。もし音程が合っていないと、2人の音が波打つようにうねります。とても気持ちの悪い感じがするのです。ここで調整して、高さがピタッと合ったとき、そのうねりがなくなって、まっすぐな横線のように気持ちの良い具合になります。これがチューニングが合った状態です。
皆がバラバラな音程の状態で合奏をしても、うねりが気持ち悪くて、とても聴けたものではないのじゃ!
クラリネットのチューニングの仕方について
管の抜き差しで音程を合わせる
クラリネットを組み立てる時は大抵、マウスピース・たる(バレル)・上管・下管・ベルの間は隙間なくはめ込みますね。その状態は、その楽器の出せる「1番高い音程」の状態です。ここから、管を抜いて少しずつ低く調整していくことが多いです。どういうことなのか詳しく説明していきますね。
個人でチューナーを使って音程を合わせる
リラックスして、自分が一番吹きやすい状態で、自分の出せる1番いい音で合わせたい音をロングトーンします。この時にチューナーの針が真ん中に来ることを目指します。
- 針が右に振れてしまう場合
音程が高いです。管を「抜く」必要があります。たると上管の間に少し隙間をあけてみましょう。すると音程が低くなります。基本的に、楽器は長さが長くなると、音が低くなります。(ベークラより、管の長いバスクラの方が低い音が出ますよね。)隙間を開けることで、管の長さを長くしているのです。
- 針が左に振れてしまう場合
音程が低いです。管を「入れる」必要があります。たると上管の間の隙間を詰めてみましょう。これ以上入らないという場合には、楽器がまだ温まっていない可能性が考えられます。もう少し音出しをしっかりしてからチューニングしてみて下さい。
チューニングが合わないときは、高い時は管を抜き、低い時は管を入れるようにしましょう。
抜く場所について
抜く場所について、優先順位をつけて説明します。
① たると上管の間
ここで主に調節します。しかし、コルクが見えてしまうほど抜くのは抜き過ぎです。接続が不安定になって抜けやすくなります。大体2mmが限界でしょう。
重要なことは、ここを抜くことで全ての音が平等に下がるわけではありません。1番影響を受けるのは、開放のソ〜ラ〜シ♭あたりの音域(ブリッジ音域)です。
チューニングB♭が合わないからと、この場所を抜きすぎると、開放のソが低くなりすぎてしまった、などということが起こります。ブリッジ音域の音程とのバランスを考えながら抜きましょう。
② ベルと下管の間
①の場所を抜いてもまだ音程が高い場合は、ベルと下管の間を抜いてみましょう。ただしここを抜くことで変わる音程は微々たるものです。
③ 上管と下管の間
ここも抜くことはできますが、連結部分がまっすぐになっていないと音の出方に影響してしまいます。ですからあまりお勧めはしません。
左の写真は連結部が合っています。右の写真は、上管と下管の間を抜いてみましたが、連結部がずれてしまっていますね。これが良くない例です。
楽器の抜き差し以外で合わせる
チューナーを使い、管の抜き差しをして、チューニングB♭は合ったとします。しかし、他の音はまだ合っていない状態です。特定のこの音だけ低い、高いといったことが起こるのが管楽器です。
その楽器の個性と付き合っていく必要があります。どのように合わせていくか説明しますね。
- 口の形で変える
アンブシュア(くわえ方、唇の閉め方)や、舌の位置を変えて口の中の広さを変えることで、音程を変えることができます。
- 替え指を使う
ブリッジ音域付近の音は、音程が合いづらいです。開放のソ・ラなどは、完全に開放にしてしまわずに、左手の薬指だけ塞ぐ、空いている右手の指は全て塞ぐなど、いろいろ試してみてください。音がまろやかになり、少し音程も変えることができます。
運指表には載っていないから、自分で研究する必要があるのじゃ。
周りと合わせる
各個人がチューナーで音が合うことが重要なのではなく、合奏をするのですから、周囲の人と合わせられるか、が鍵になってきます。
周囲の音をよく聴くことで、その音に合わせようと頭の中で強くイメージされます。そのイメージを忠実に表現しようとすることで、周りと合うようになっていきます。
これには、「合わせよう」「周りの音を聴こう」という気持ちをきちんと持つことが大切です。自分の音色は周りに溶け合っているかどうか、耳を使ってしっかり聴き、必要であれば音程を調整しなおしましょう。
自分勝手に吹くのではなく、周りに合わせる意識を持ちましょう。
チューニングがどうしても合わない、特定の音だけ音程が悪いときは、楽器調整が必要
まず、そのような状態の時は、あなたの吹き方が悪いのか、楽器の調子が悪いのか判断しなければなりません。
同じパートの仲間に、その楽器を吹いてもらい、やはり同じように音程が悪いということになれば、楽器屋さんに持っていき調整をしてもらいましょう。
キイの空き具合や、タンポの劣化等によっても音程が変わってきますから、ちょっとおかしいなと感じたらプロに相談してみてください。
クラリネットにお勧めのチューナーについて
チューナーには、通常の据え置き型(四角い形で譜面台において使うもの)や、楽器本体に挟んで使うことのできるクリップ型等色々な種類があります。
クラリネットはベルが下の方にあるため、クリップ型だと目盛りが見づらくて使いにくいかもしれません。お勧めは、据え置き型にチューナーマイクを取り付ける方法です。そうすることで周りの音を拾わなくなるため、合奏中でも使えます。
チューニングは大事だけど、チューナーを見すぎるのは良くない
チューナーを見なくても正しい音程を取れるようになるには、合っている時の音を耳と身体で覚えることが大切です。
具体的な練習の手順としては、
①チューナーを見て正しいピッチに合わせる
②その時の音を「耳」と「身体(口の形、息の量・早さ、姿勢)」で覚える
③覚えられたらチューナーを見ずに吹いてみる
④一瞬チューナーを見て合っているか確認する
このような流れで練習すると次第に音程感が身についてきます。チューナーの針の動きに一喜一憂せず、耳や脳を使って体に染み込ませ、正しい音程感を養いましょう。
チューナーに張り付いているだけでは、とてもじゃないが合奏にならんからのう。音をまっすぐに伸ばせるようロングトーンの練習も大切じゃ!
まとめ
いかがでしたでしょうか。合奏するにあたって、チューニングが大切であることがお分かりいただけたかと思います。音程を合わせるのは難しいですが、だんだんとできるようになりますよ。練習あるのみです!頑張りましょう!